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2025/05/13

【精神科専門医】「認知的不協和」、「葛藤」、「防衛機制」の違いや関係について解りやすく解説

  • 認知的不協和
  • 葛藤
  • 防衛機制
  • 心理学
  • ストレスマネジメント
  • ほぐ活

代表医師 吉岡鉱平先生

今回は、心理的ストレスの原因の一種として、「認知的不協和」、「葛藤」そして「防衛機制」の違いや特徴について解りやすく解説します。

まずは、「認知的不協和」と「葛藤」の違いについて。これらはどちらも心の中に矛盾や不一致がある状態を指しますが、心理学的には異なる概念です。それぞれの定義と違いを、以下に記載します。

1. 認知的不協和(Cognitive Dissonance)

定義:
自分の中にある「信念・態度・行動」に矛盾や不一致があるときに生じる不快感

提唱者:
レオン・フェスティンガー(Leon Festinger, 1957年)

特徴:

  • 思考や信念の不一致によるストレス
  • 無意識ではなく、認知的に自覚される不快感
  • 不協和を減らすために、態度や思考を変える行動が生じる

例:

  • 「健康に悪いと知ってるけどタバコを吸っている」
     →「禁煙は難しいから、少しなら大丈夫」と考えを変える

2. 葛藤(Conflict)

定義:
複数の相反する欲求・価値・動機が同時に存在して、どちらを選ぶか悩む状態。

特徴:

  • 「〇〇したいけど、△△もしたい(or したくない)」という意思決定の迷い
  • 状況によって接近-接近・接近-回避・回避-回避などに分類される
  • 結論を出せないことが心理的ストレスとなる

例:

  • 「昇進したいけど、家族との時間も減らしたくない」

違いの比較

項目認知的不協和葛藤
原因矛盾した信念・態度・行動の不一致相反する欲求・動機・目標の衝突
状態認知的な不快感(discomfort)迷い・決断困難
対処認知を変える・正当化する選択する・優先順位をつける
「環境に悪いと思ってるけど車に乗る」「旅行に行きたいけどお金が心配」
提唱者レオン・フェスティンガー(1957年)明確な提唱者はなし(古典的心理学から)

補足:

  • 認知的不協和は、ある意味「内面的な正当化のための理屈の再構築」に近く、
  • 葛藤は、「どっちを選ぶべきか、選べない苦しみ」に近いです。

3.防衛機制とは?

認知的不協和葛藤が強くなり、本人にとって受け入れがたいレベルの不安や緊張、ストレスが生じると、防衛機制(defense mechanisms)が発動されることがあります

なぜ防衛機制が働くのか?

人間の心(自我)は、
「自分を脅かすような不快な心理状態」から自分を守ろうとする無意識的な働きを持っています。
その代表が防衛機制です。

それぞれとの関係性

認知的不協和 → 防衛機制

  • 認知的不協和は「自分の信念・行動・態度の不一致」による心理的な不快感(discomfort)
  • これを減らすために、
     → 「合理化」「否認」「投影」「抑圧」などの防衛機制が使われることがあります。

例:
「動物愛護に賛成だけど焼肉が大好き」
→「肉はスーパーで売ってるからいいんだ(合理化)」
→「自分が食べても関係ない(否認)」

葛藤 → 防衛機制

  • 葛藤では「対立する欲求や価値観の板挟み」によって決断できない苦しさ・不安が高まります。
  • それを和らげようと、防衛機制が発動することがあります。

例:
「会社を辞めたいけど、家族を養わなければいけない」
→「今辞めたら無責任だ(抑圧)」
→「こんな環境でも我慢できる自分は偉い(合理化)」
→「あの上司が悪い(投影)」

まとめ

心理状態ストレスの内容典型的に使われやすい防衛機制
認知的不協和信念と行動の不一致による不快感合理化・否認・投影
葛藤相反する欲求や価値の板挟みによる不安抑圧・合理化・退行など

心理的ストレスに対するストレスマネジメントを実践するうえで、認知的不協和、葛藤、そして防衛機制についての理解を深めることは自分の心理状態を客観的に把握しストレスマネジメントに役立ちます。普段から役立てていただけますと幸いです。

監修医師

吉岡鉱平先生

Baseクリニック赤坂 院長
日本精神神経学会専門医、精神保健指定医、日本医師会認定産業医

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